一条工務店では、標準でエアコンが付きます。でも多くの人がオプション品を選んでいます。なぜかわかりますか?
実は除湿のためなんです。
この記事を読めば、標準品とオプション品の性能の違いや設置例をはじめ、エアコンの基本がわかります。
「さらぽか」との比較
エアコンは部屋の温度を下げるものと思っていませんか?実はそれだけではありません。うまく使えば、部屋の湿度を下げて快適にしてくれます。
夏の暑さがこたえるのは、温度が高い+湿度が高いから、なんですね。湿度が低ければ、ある程度の高温でも人は快適と感じます。
詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
家全体を除湿するにはいくつか方法があります。まずどんな方法があるか見ていきます。
方法 | 初期費用 | 維持費 | 除湿効果 |
---|---|---|---|
さらぽか | ✕ | ✕ | ◯ |
エアコン | △ | ◯ | △ |
除湿器(幹太) | ◯ | △ | ✕ |
除湿器で家全体を除湿するのは不向きなので、実際には「さらぽか」か「エアコン」の二択です。
さらぽかは、デシカント方式で除湿を行う「全館床冷房」です。導入すれば、標準の床暖房とあわせて「全館床冷・暖房システム」なります。
夏場はから「さら」っと乾燥していて、冬場は「ぽか」ぽかしますよ、ってことですね。ただし寒冷地では、結露のリスクがあって残念ながら「さらぽか」は採用できません。
エアコン
標準
一条工務店の標準エアコンは、㈱長府製作所(山口県)製のRAYエアコンです。
図面上は「RAY」で標記され、複数ある場合は「RAY1」「RAY2」のように、番号が付きます。
このRAYエアコンには、大きなデメリットがあります。それは「再熱除湿機能」がないということです。
再熱除湿機能とは、一度冷やした空気を、もう一度暖めて吐き出す機能です。もう一度暖めるときに電気代がかかるというデメリットがあります。
このことから、省エネの流れの中で、再エネ除湿機能が搭載された機種は減ってきています。
梅雨時には、気温が上がらず肌寒い日があります。じめじめして除湿が必要なこの時期に、再熱除湿機能がないと、寒くてエアコンが使えず除湿ができなくなってしまうのです。
エアコンの目的は、冷房(室温を下げる)ではなく、除湿(湿度を下げる)と考えてください。
湿度管理に関する記事で説明したように、湿度がさがれば、室温をそれほど下げなくても快適です。室温が28℃でも、湿度が40%なら快適です。
オプション
一条工務店がオプション設定しているエアコンのうち、再熱除湿機能がついているのは、三菱の最上位機種JXVシリーズ。
施主支給よりもオプションでいれたほうが、安くなります。JXV2220(6畳用)の場合だと、楽天の最安値で約93,000円(R3.4末現在)、一条工務店のオプション価格が87,000円です。
RAYエアコンをキャンセルする場合は、「4万円の減額」になります。
エアコンの機種選びは、どの出力にするかも大きなポイントになります。
カタログには何畳用という出力の記載がありますが、旧来の気密断熱性能の低い家が基準になっているので、高気密高断熱の住宅にはオーバースペックになってしまいます。
エアコンの出力はこちらを参考に
エアコンにしっかり除湿させるためには、小出力のエアコンを強モードで、電源を入切せずに継続運転するやり方が効率的です
車に例えれば「エンジンの回転数を上げた状態で高速道路を走り続ける」のが理想です。逆に、大出力のエアコンを弱モードでつけたり消したりする運転では効果的に除湿できません。
一条工務店のエアコンの標準で設置できる台数は、坪数で決まっています。
1台 | 2台 | |
---|---|---|
グランセゾン | 40 坪未満 | 40 坪以上 |
i-smart | 58 坪未満 | 58 坪以上 |
グランセゾンでは、施工面積が40坪以上になると2台標準になります。i-smartの場合は、施工面積が58坪以上にならないと2台標準になりません。
一条工務店が、両商品の断熱性能をどう評価しているかが垣間見れて面白いですね。
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わが家の例をご紹介します。
・メイン(2階階段付近に設置):三菱MSZ-JXV2820(12畳用)
・サブ(1階リビングに設置):三菱MSZ-JXV2220(6畳用)
「霧ヶ峰」でおなじみの、三菱電機製品です。
サブは真夏の暑さ対策用。
2台で、工事費含めオプション代は約25万円。
ポイントは、2階にメインエアコンを設置すること。冷風は上から下に流れるので、2階のエアコンを24時間運転で家の中の温度・湿度をコントロールします。
ひと夏使用した感想はこちら↓↓
配管とコンセント
配管
壁の中を配管する方法が「隠蔽(いんぺい)配管」で、配管が見えなくなってスッキリします。
反対に、配管を外壁に沿って通す方法が「露出配管」で、配管が丸見えです。建物正面などの目につくところは、隠蔽配管にこだわりたいですね。
建築に合わせてエアコンを設置せずに、住んでみて後から必要に応じて設置したいときは、壁に配管のための穴を空けておきます。
これを「スリーブ施工」といい、図面で「AC(ス)」と表記されます。配管は露出になります。
我が家では、子供部屋にスリーブ施工とエアコン用コンセントの設置をしてもらいました。
どうしても露出配管がいやな人は、建物建築と合わせて備え付ける(図面で「AC(施)」と表記)必要があります。
コンセントの位置
エアコンのコンセントの位置は通常、吹き出し口の下になります。
これを右の写真のように本体上部に移動できます。そうすると、左の写真のように1階からはコンセントが見えなくてスッキリ。
ただし、オプション代(3,000円)がかかります。
「なぜコンセントの位置変更にオプション代が?」…とは思いますが、高い値段ではないのでエアコンまわりをスッキリさせたい方はご検討を。
Q&A
Q1. RAYエアコンをキャンセルすると室外機も不要になるの?
RAYエアコンの室外機は、床暖房の室外機も兼ねています。ですから、RAYエアコンの室内機をキャンセルした場合でも、室外機は床暖房用に必要です。
なので、RAYエアコンをキャンセルしてオプションのエアコンを設置する場合は、
・床暖房用の室外機1台
・オプションエアコン用の室外機1台
の計2台となります。
Q2. エアコンは各部屋にあったほうがいいの?
はっきりいって、高気密高断熱の一条ハウスで個室にエアコンを設置すると「冷えすぎ」ます。
各部屋にエアコンを設置したら、費用もばかにならないですよね?
そこで、部屋のドア上部の壁に設置するエアパスファンという設備がおすすめ。これがあると、部屋の内と外の気温が均一になります。
ドアを開け放っておけばファンは必要ないんじゃない?
と思うかもしれませんが、エアパスファンを稼働させたほうが部屋の奥の方まで冷風が入ってきて快適です。
子供が年ごろになると、ドアを開け放っておくことも難しくなりますし。
エアパスファンの設置は一条工務店の稟議案件になりますが、i-smartでもグランセゾンでも設置の先行例があるので問題ありません。
ただし、耐水害住宅などの「ミッドプライウォール構造」の場合は、ファンを設置するスペースがとれるかどうかの確認が必要です。
エアパスファンのオプション代は、4台(工事費込み)で 108,800円 でした。
でも、ロスガードの空気の流れを妨げることにならない?
そう考える人がいるかもしれませんが、そこまで大きな問題はないと考えています。
寝室や子供部屋など、建築基準法上の「居室」には、室内の天井にSA(Supply Air の略)が設置されます。
SAは新鮮できれいな空気が出てくる給気口です。SAから出た空気は、部屋の中をぐるっと周ってドアの隙間から廊下に出ていきます。
ドア上部の壁に設置するファンが、この空気の流れを妨げないか?という心配ですね。
確かに年中ファンを稼働させていれば、その懸念はあります。
が、エアパスファンの稼働時期(7~9月)は1年の1/4に過ぎないこと、基本的に稼働時間は(我が家の場合は)就寝~起床であることを考えると、神経質に考える必要はないと考えています。
Q3. エアパスファンって本当に涼しくなるの?
エアパスファンをひと夏使った感想です。
夜ベッドに入る時にスイッチを入れ、朝起きて部屋を出る時にスイッチを切る。
このサイクルでひと夏使ってみて、効果がはっきりと実感できました。
エアコンは2階廊下に設置して24時間運転。なので、2階の廊下は温度・湿度が低い常に心地いい環境です。
エアパスファンをONにすると、廊下の涼風をしっかり部屋の中に取り込んでくれます。
ONとOFFで室内温がぜんぜん違うことを実感。
まとめ
✔ 夏場の大きなテーマは「いかに家の中の湿度を低く保つか」。湿度が低いと、室温が高くても快適ですし、ダニ・かびを防止できます。
✔ ポイントは梅雨時期からのエアコン24時間運転。(電気代は意外とかかりません)
✔ エアコンは、外気温が低いときに「除湿運転」ができるよう、「再熱除湿機能」付きを選ぶ。
✔ 一条工務店標準のRAYエアコンにはこの機能がないので、オプションを使う。(三菱電機の霧ヶ峰を選んでおけば安心)
✔ 各部屋にエアコンを設置すると冷えすぎ問題が発生するので、エアパスファンを使う。(念のためエアコン用コンセントと先行スリーブで保険を)