この記事は、こんな方に向けて書いています。
・Q値ってなに? Ua値ってなに?
・断熱性能はどのハウスメーカーがいいの?
断熱性と気密性
冬あったかい家に住みたいですよね?
れんきちも雪国に住んでいるので、外から帰ってきて家が「ほっこり」とあったかかったら最高だな..といつも考えていました。
断熱性能が高ければ、夏もメリットあります。家の中の冷えた空気が外に逃げないっていうことですから。
でも、断熱性能のQ値がいくつ、Ua値がいくつって言われてもよくわからないんですよね。C値っていうのもありますし。
家の性能をあらわす単位として、「Q値」「Ua値」「C値」があります。Q値とUa値は断熱性、C値は気密性(隙間)をあらわします。
たとえ話をしましょう。あなたが真冬の寒空の下、ブルブル震えながら薄着で外に立っています
風邪をひくとわるいので、ユニクロの「ウルトラ・ウオーム・ダウンコート」(ユニクロ史上もっとも暖かいアウター)を羽織ります。
あなたのステイタスは、「断熱性=高」になりました。
次に、コートを羽織っただけでは寒風がコートの合わせ目から吹き込むので、コートのチャックをのど元までしっかり閉めます。
これであなたのステイタスは、「断熱性=高」+「気密性=高」にあがりました。
「ウルトラ・ウオーム・ダウンコート」がなく、春物の薄手のコートしか手持ちがない場合は悲劇です。
着ないよりはましなので薄手のコートを羽織りますが、震えはおさまりません。
あなたのステイタスは、「断熱性=低」です。
せめてチャックを閉めようとしましたが、チャックではなくボタンが2つあるだけでした。仕方なくボタンをかけましたが、合わせ目から寒風が吹き込みます。
あなたのステイタスは、「断熱性=低」+「気密性=低」です。
断熱性と気密性は、両方大事なことがわかりますね。
Q値って? Ua値って?
コーヒー好きのあなたは、寒い冬の日に、スタバでホットコーヒー(グランデ)を、ドトールでホットコーヒー(スモール)を買って家に帰ります。
飲みたい気持ちをグッと我慢して、スタバとドトールのカップの断熱性能を比較実験してみます。
2つのカップを外に持ち出して冷たい外気の中に放置します。コーヒーの熱は、「蓋」「カップ周り」「カップ底」からだんだん奪われていきますよね。
このときの「コーヒーの冷めやすさ(熱の逃げやすさ)」をあらわすのが、「Q値」であり「Ua値」なんです。
サイズの異なるスタバとドトールのコーヒーカップの断熱性能を比較するには、サイズを合せる必要があります。
そこで、熱損失の量をカップの面積で割って、単位面積当たりで比較してみます。
コーヒーカップから逃げる熱の総量を、「カップの底」の面積で割ったのがQ値です。
コーヒーカップから逃げる熱の総量を、「カップの表面積の合計(蓋+周り+底)」で割ったのがUa値です。
Ua値は蓋が完全密閉の前提で、Q値はカップと蓋の間の自然な空気の通り(換気)があるものとして計算します
Q値もUa値も、値が小さいほうが断熱性能が高い(熱が逃げにくい)ということになります。
じゃ、なんで二つの基準があるのか?ですよね。最初はQ値だけでしたが、家の形が数値が影響を与えるというデメリットがありました。
高層ビルのような縦に長い建物は、建物の表皮(天井+壁+床)に占める床の割合は小さくなります。
➡「熱損失量÷床面積」の分母が小さくなるので、熱損失の数値が大きくなる傾向
逆に、平屋でだだっぴろい建物は、建物の表皮(天井+壁+床)に占める床の割合は大きくなります。
➡「熱損失量÷床面積」の分母が大きくなるので、熱損失の数値が小さくなる傾向
家の断熱性能を考えるときは、コーヒーカップの蓋→屋根、周り→壁、底→床 で考えてくださいね。
まとめます。
Q値=建物から逃げる熱量(W/K)÷延べ床面積(㎡)
(延べ床面積1㎡あたりの熱損失の量)
Ua値=建物から逃げる熱量(W/K)÷表皮面積(㎡)
(表皮面積1㎡あたりの熱損失の量)
公的には、Ua値の方が使われています。
Q値・Ua値を求める計算式の分子は、家の内外の温度(K=ケルビン)差1℃あたりの、1時間に家から逃げる熱の量(W=ワット)なので、単位はW/Kです。
分母の単位は㎡なので、Q値・Ua値の単位は W/K ÷ ㎡ で「W/㎡K」になります。
ちなみに、Q値は「熱損失係数」、Ua値は「外皮平均熱還流率」と言われますが、「どれくらい熱が逃げやすい家なのか?」をあらわす指標で、「数値が小さい方が優秀(熱が逃げない)」とだけ覚えておけば十分。
地域ごとの省エネ基準
南北に長い日本では、北海道で必要な断熱性能と沖縄で必要な断熱性能は違いますよね。
そこで、全国を1(北海道)~8(沖縄県)の地域に分け、それぞれに基準となるUa値が定められています。
地域 | 都道府県 |
---|---|
1, 2 | 北海道 |
3 | 青森・岩手・秋田 |
4 | 宮城・山形・福島・栃木・新潟・長野 |
5, 6 | (その他の都道府県) |
7 | 宮崎・鹿児島 |
8 | 沖縄 |
実際は、都道府県単位ではなく市区町村単位で地域区分されているので、自分の住んでいるところがどの区分に該当するかはこちらで確認してください。
ハウスメーカー比較
日本の住宅のUa値には、いくつかの基準があります。
政府が推奨する断熱性能(H28基準)は、先進諸外国と比べるとすごく緩い基準になっています。日本では、この基準に達していれば、オフィシャルには合格点と認められます。
この基準をクリアーすれば、実際に快適かつ省エネに生活できるのかというと、それはまた別問題です。
住宅分野における省エネを進めるため、政府は2030年までにすべての新築住宅を一定の断熱基準まで高める、という目標を掲げています。
この基準が、住宅の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅(ZEH)になるための基準である「ZEH基準」です。
政府が掲げるこれらの基準は、先進諸外国と比べるとまだまだ低いんです。
そこで、恥ずかしくないように、せめて外国並みの基準を導入しよう、と学者・有識者が「2020年の断熱性能はこれがおすすめ」という基準を提唱しました。
これが HEAT20 です。グレード1と2があります。
さて。地域(1~8)ごとの各基準のUa値と、大手ハウスメーカーのUa値をまとめたのが下の表です。
各社とも、漏れなく「断熱性能」をPRしているものの、数値を公表しているのは一条工務店のみです。
ほかのハウスメーカーは、「ZEH基準をクリアー」や「H28年基準をクリアー」という表現です。まったくUa値に言及していないメーカーもあります。
– | 地域区分➡ | 1, 2 | 3 | 4 | 5, 6, 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|
一条工務店 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | |
有識者が提唱 | HEAT20 G2 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34-0.46 | – |
有識者が提唱 | HEAT20 G1 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48-0.56 | – |
政府の目標基準 | ZEH基準 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | – |
大和ハウス | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | – | |
政府の推奨基準 | H28年基準 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | – |
積水ハウス | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | – | |
セキスイハイム | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | – | |
住友林業 | 0.46 | 0.56 | – | 0.87 | – | |
ヘーベルハウス | * | * | * | * | * | |
ミサワホーム | * | * | * | * | * | |
トヨタホーム | * | * | * | * | * | |
三井ホーム | * | * | * | * | * |
同じメーカーでも、商品によってUa値が違ってくる場合があるので、詳細は各ハウスメーカーの営業にお問い合わせください。
一条工務店の0.25はi-smartのUa値です。セゾン系は公表されていません。一条工務店のUa値とQ値をまとめました。
商品 | Ua値 | Q値 |
---|---|---|
i-smart | 0.25 | 0.51 |
グランセゾン | 未公表 | 0.98 |
まとめ
各ハウスメーカーのホームページでは、各社とも自社の断熱性能をきれいなスライドで説明しています。
実際以上に、素人が見ればさもすごいテクノロジーを使っていると思わせるようなものも中にはあります。性能は、イメージに惑わされず数値で評価することが大切ですね。