【体験談】一条工務店の耐水害住宅|価格やデメリットをわかりやすく解説

floodStep❶ 家をつくる

「川が近いので、大雨が降ると洪水が心配..」

「近くの側溝が溢れやすいみたいだけど、大丈夫かな..」

そんな心配がある方は、耐水害住宅を検討する価値があります。

ただ耐水害住宅を採用している人自体があまりいないので、口コミや体験談が少ないのが難点。

この記事では、耐水害住宅を実際に採用した私が詳細を解説します。

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耐水害住宅は2種類

2020年秋に一条工務店は、耐水害住宅の販売を開始しました。2つのタイプがあるので順に説明します。

スタンダードタイプ

水位が1mに達するまで、高い水密性で建物への浸水を防ぎます。水位が1mを超えると、建物が浮力で浮上する前に床下に強制的に水を引き込み家が浮くのを防止します。

浮上タイプ

この実験動画にあるのが浮上タイプ。水かさが増したときに、浮くことで水没を防止します。水が引くと、それに合わせてもとの基礎の上に戻ります。

You Tube に動画があります。ご覧になる方はこちら

耐水害住宅の仕様

出典:一条工務店HP

各仕様の概要は一条工務店HPをご覧ください。ここでは主な仕様について詳しく解説していきます。

床から窓の下端までの寸法が969mm必要になります。つまりCAD図面では「+969」の表記がなされます。

これに伴って窓の高さが10cm程度短くなります。例えば「JK4045→[耐水害住宅]JK4042」となります。(窓番号の下二けたが高さを表します)

もう一つ大きな点は、掃き出し窓に「引き違い窓」の設定がないことです。

下の写真は掃き出し窓(耐水害仕様)です。(FIX窓+開き窓)という仕様になります。並びは(FIX窓|開き窓)か(開き窓|FIX窓)かを選ぶことができます。

出典:一条工務店カタログ(一部加工)

下のCAD図面がれんきち宅のダイニングの掃き出し窓(FIX窓|開き窓)です。サイズは「5971」なので、幅1.8m✕高さ2.1m 程度。この窓が耐水害住宅で採用できる最大サイズです。

玄関ドア

玄関ドアは「耐水害専用タイプ」の中から選択することになるので、通常タイプよりも選択肢が限定されます。

また耐水害仕様では、水の進入口になる鍵穴の位置が上部に移動されました。(写真参照)このため、スマートキー(eエントリー)は一体型が採用できず、別体型になります

ちなみに、中空パッキンは、自動車のドアパッキン製造メーカーと共同開発。水圧がかかればかかるほど、水密性が上がり、水が浸入しない仕組みです。

耐水害住宅玄関ドア
出典:一条工務店カタログ(一部加工)

基礎

基礎には「フロート弁付き床下換気口」がつきます。普段は床下に外気を取り込む換気口の役割です。

耐水害住宅
出典:一条工務店HP

基礎の中には箱が設置され、箱の中にフロート式の弁が設置されています。

基礎の中に設置された箱

水が浸入してくると、弁が浮いてフタをすることで、床下への浸水を防止。水が引いたら弁も下がり、元の状態に戻って再び換気口として機能します。換気口の数は家の大きさによって変わってきます。

下の写真は基礎の立ち上がりです。幅は24cmもあり堅牢です。一般住宅でこれだけがっしりしたつくりは、まず見られないでしょう。

ちなみに建築基準法で定める基準12cmの倍の厚みですね。地震にも安心です。

基礎の立ち上がり

エコキュート

家電メーカーの長府と共同開発した耐水害仕様。

特徴は ①本体の一部が水没しても稼働するよう、水に弱い基板や電源などの電気・電子部品を上部に配置 ②断水時にタンク内の湯水を生活用水として使用できる構造 の2点です。

耐水害住宅
出典:一条工務店(一部加工)

②については、標準のタンク容量370リットル(2リットルのペットボトル約180本分)なので、4人家族なら飲料・洗面・手洗い・洗い物などに使っても約3日分ります。

価格は耐水害仕様になったことによって+25,000円になっています。

排水逆流防止弁

排水管に水害時に汚水の逆流を防止する弁がつきます。通常時(左図)では、弁が開いた状態で排水。水害で水かさが増して汚水が逆流したとき(右図)には、自動で弁が閉じます。

シンプルな(開発費もそれほどかかっていないだろうと思われる)仕様ですが、個人的には非常に意味のある重要な仕様だと考えています。

逆流防止弁がないと、水害のときにどうなるか?

耐水害住宅
出典:一条工務店HP(一部加工)

下の写真を見てください。浴室(トイレ、キッチン、洗面台からも)汚水が吹き出すんです。こうなってしまうと後で消臭しても臭いが残ってしまいます。

耐水害住宅
出典:一条工務店HP(一部加工)

汚水が家の中に流入するのとしないのでは、水害のあと通常生活に戻るまでにかかる時間やコストがまったく違ってきます。

電気設備の据え付け

電気設備については、洪水時に水没しないように高い位置に据え付けられます。据え付けに係るオプション代は不要です。

写真左がエアコンの室外機、写真中が外部コンセントで高い位置に据え付けられます。蓄電池と、太陽光発電を制御するパワーコンディショナーも同様。蓄電池は重さ100kg超ですが、一条工務店独自の技術で壁の高い位置に据え付けられます(写真右)。

耐水害住宅
出典:一条工務店HP(一部加工)

床下注水ダクト(スタンダードタイプ)

床下注水ダクトはスタンダードタイプの仕様です。浮上タイプにはありません。

スタンダードタイプは、水かさが1mを超えると家が浮かないように床下(基礎)に注水します。そのためのダクト(写真右)が2~3か所に設置されます。

耐水害住宅
出典:一条工務店HP(一部加工)

耐水害住宅の価格

キャンペーン価格(坪単価)

耐水害住宅の値段は、キャンペーン価格(坪単価)でスタンダードタイプが12,000円浮上タイプが30,000円です(2021年7月末現在)。

金額の引き上げ(キャンペーンの終了)が近々なされるという情報はありませんが、2021年8月以降の価格は営業さんにご確認ください。

かくれた費用

坪あたりでかかってくるオプション代のほかに、「かくれた費用」が発生する場合があります。網戸です。

一条工務店では、網戸は標準ではなくオプション。積算は、①設置数の単純合計額か、②(3,000円×坪数)かを選べます。設置窓が多い場合は、後者②がお得になります。

が、耐水害住宅では②(3,000円×坪数)を選ぶことができません。設置する窓の単純合計額になります。網戸付き窓の計画が多い方は割高になってしまいます。  

またエコキュートの耐水害仕様は、プラス25,000円のオプション代が発生するので、これも「かくれた費用」として考えておく必要があります。  

耐水害住宅のデメリット

グランセゾンは対象外

耐水害住宅のオプション設定は i-smart(またはi-cube)に限定され、グランセゾンは対象外です。水密性を確保する必要があるため、基本性能がより高いi-smart がベースになります。

れんきち宅も当初グランセゾンで計画していましたが、メリット・デメリットを検討した結果、「i-smartで耐水害住宅」の判断をしました。

窓の制限・制約

通常、窓の高さ(床~窓下端の寸法)は自由に設定できます。たとえば外からの視線が気になるからこの窓は腰高よりも高めに設置しよう、この窓は外を眺めたいから膝高ぐらいに設置しようという具合に。

耐水害住宅は、先ほど解説したように床からの高さは969mmとなります(2階も同様)。また、掃き出し窓については「引き戸」の設定ができず、耐水害専用の(FIX窓+開き窓)になります。

大物家具の搬入には注意が必要。というのは掃き出し窓の開口部は62cmなので、ここから大物家具を搬入するのはムリだから。

玄関ドア(開口部86cm)から入れてLDKの入口ドアを通すことになりますが、親子ドアでない場合の開口部は69cmです。

わが家の冷蔵庫はギリギリ通りましたが、大物家具は事前に確認が必要です。

玄関ドアの制限・制約

水密性を高める必要があるため、玄関ドアも耐水害専用になります。セレクトできるタイプは通常よりも制限されます。

耐力壁の出現

これは耐水害住宅というよりも、2倍耐震となることの裏返しです。これにより、意図しない箇所に耐力壁が出てきて間取りが制約される部分がでてきます。

ただメリット・デメリットは表裏一体なので、こういった制約があるということは、逆に高い耐震性が確保されるということでもあります。

耐水害住宅のメリット

まず何よりも大雨の時の「安心感」です。毎年全国で水害が発生するたびに他人事とは思えません。が、耐水害住宅を採用することによって安心感が生まれます。以下メリットについて解説します。

地震にも強い(2倍耐震が標準)

耐水害住宅は「2倍耐震」が標準になります。「2倍耐震」のオプション代は坪単価3,000円(キャンペーン価格)ですが、耐水害住宅を採用すると無料で施工可能です。

「2倍耐震」については、こちらの記事が読まれています。

避難所生活が不要

家の中に水が入ってしまうと、洪水が引いた後も復旧に時間がかかり避難所生活を余儀なくされます。しかし、耐水害住宅の場合は家の中に水が入らないので在宅避難が可能になります。避難所でのストレスや、コロナ感染の心配もなくなります。

復旧にお金がかからない

家が浸水してしまうと、床をはがしたり、住宅設備や断熱材を入れ替えたりする必要がり復旧に数百万円単位で費用がかかります。保険に入っていたとしてもすべてが保険の対象になる場合は稀です。

耐水害住宅の場合は、そもそも家の中に浸水させないつくりなのでこういった費用が掛かりません。

耐水害住宅を採用すべきか?

耐水害住宅

気候変動に伴う洪水の増加

国土交通省がシミュレーションした下の表を見てください。気温が2℃上昇する楽観的シナリオの場合でも、降雨量が1.1倍。このとき河川の流量は1.2倍で、洪水の発生頻度は「約2倍」に達するんです。

耐水害住宅

では河川の近くに住んでいなければ安全か? そうではありません。下の円グラフを見てください。河川の氾濫による浸水被害は約3割に過ぎません。残りの約7割は内水によるものです。

内水とは要するに、側溝の排水機能が追い付かず、側溝から溢れた水で浸水してしまうことです。住宅街で見られます。

耐水害住宅
出典:一条工務店HP

こういった気候変動に伴う客観的な洪水発生リスクをまず念頭に置く必要があります。

洪水ハザードマップ

家を建てる場所の浸水リスクを評価します。これには「洪水ハザードマップ」を使います。都道府県と市区町村をプルダウンメニューから選びます。

耐水害住宅

次に、洪水ハザードマップと内水ハザードマップを確認します。

耐水害住宅

洪水ハザードマップの場合は、浸水の深さによって下の図のように色分けされています。家を建てる場所の色を確認しましょう。

耐水害住宅
出典:浸水洪水浸水想定区域図作成マニュアル(国土交通省)

耐水害住宅を採用するかどうかの判断材料に「浸水の深さ」を使うというのが私の結論です。以下、私の考える基準です。浸水の深さが0.5mを超えれば耐水害住宅を検討する余地ありです。

浸水の深さ対応
3m耐水害住宅(浮上タイプ)
0.5~3m耐水害住宅(スタンダードタイプ)
~0.5m基礎高などで対応

まとめ

耐水害住宅の価格(坪単価)は、スタンダードタイプが12,000円、浮上タイプが30,000円(キャンペーン価格)。「かくれた費用」に注意が必要。

デメリットは、グランセゾンが対象外であること、窓や玄関ドアに制限・制約があること。

メリットは、地震にも強い(2倍耐震が標準)こと、避難所生活が不要になること、復旧にお金がかからないこと、そして何よりも安心感。

・耐水害住宅の採用にあたっては、市区町村で作成しているハザードマップ(洪水・内水)で家を建てる場所を確認する。

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